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Part13 卒業式での話(式辞)

2021年3月17日 13時33分

 式 辞

 厳しい冬の寒さにじっと耐えていた木々の枝に、小さな芽が日増しに増え、膨らみ始めています。春の訪れと共に迎えた今日の佳き日に、伯方支所長様ならびにPTA会長様のご臨席を賜り、令和二年度、第十三回卒業証書授与式が、このように厳粛に挙行できますことは、本校にとりましてこの上ない喜びです。厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。

  さて、数々の懐かしい思い出と、大きな夢や希望を胸にして、本校を巣立っていく、三十七名の皆さん、卒業おめでとうございます。

   みなさんが、今、手にしている卒業証書は、中学校の全過程を修了した証明です。手渡しした時に、一人一人の表情に、晴れやかさとともに、新たな出発への決意が感じられ、とても嬉しく思いました。

 本校での三年間、皆さんは、ご家族の温かい励ましや、地域の皆様方のご支援、先生方の指導によって、健やかに成長し、現在を迎えることができました。お世話になった方々に、是非、みなさんの笑顔と共に、感謝の気持ちを伝えてください。

 木にも年輪があり、竹にも節があるように、人の一生には、いくつかの節目があります。今日は、その節目の日でもあり、新たな出発の門出でもあります。

 そこで、皆さんの門出にあたって、本校の教育目標「思いやりの心をもち 主体的に行動する生徒の育成」の「主体的に行動する」ということについて、最後の話をさせてください。

 自分のこととして考え、判断し、努力しようとする「主体性」は、これからの社会で、人として最も大切な資質であると言われています。

 現在、新型コロナウイルス感染防止のために、みなさんは、毎日、マスクを付けています。今年度の四月には、全国の小中学校が一斉に休校になりました。全国で、外出は制限され、社会全体が停滞した状況です。これまでの常識では考えられないようなことが、今、目の前に、当たり前のようにあります。私たちは、この中で、たくましく、しかも自分の夢を実現するために生きていかなくてはなりません。

 みなさんが一度は聞いたことのある、進化論を唱えたダーウインは、こんなことを言ったそうです。

「この世に生き残る生物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭の良いものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ。」

 まさに、今のコロナ禍の時代を生きていくための方向性を示す言葉だと思いました。

 しかし、広島大学教授で海洋生物学者の「長沼毅」さんによれば、これは、生物学的には正しくないそうです。正しくは「たまたま持って生まれた性質が環境に合ったから生き残った」ということだそうです。つまり、運が良かったからだと…。

 しかし、キリンを例に挙げ、こんなことも書かれておられます。

 キリンの首は、高い所の葉を食べるために進化して長くなった、というのは、間違いである。

 キリンの祖先に、たまたま首が長いというハンディキャップを持った個体が生まれた。自分の親を含め、身近にいる仲間たちは、みんな地面の草や低木の葉を主食にしている。首が長い個体にとっては、とても生きにくい環境である。仲間と同じことをしていては、とうてい生き残ることはできない。そんなハンディキャップを持った個体が生き残れたのは、仲間とは違った、「首が長い」という特徴を生かす方法を見つけたからだろう…と。

 つまり、仲間より「首が長い」ことを「自分はついてない」「こんな体じゃ無理」などとあきらめず、この「首が長い」というハンディキャップを「しょうがない」と受け入れ、そして、「今いる環境で頑張った」からなのだと。

 私が、一番共感し、みなさんに伝えたいのは、このことなのです。

 私たち一人一人は、顔や体格、性格は違います。家庭環境も違います。誰しも、自分だけにしか分からない、その人なりのハンディキャップを持っていると思います。それを、「自分は、運が悪い」とか「こんな環境では頑張れない」などと、投げやりにならず、このことを素直に受け入れる。自分を正面から見つめ、自分のいる環境をしっかりと理解する。その上で、自分が、なすべきことは何なのか。人とは違った何かを見つけ、それを頑張る。これこそが、自分の夢を実現できる方法だと思うのです。

 二十一世紀、予測のつかないことが起こるであろう時代に活躍するみなさん、自分の特徴や、自分の置かれた環境をしっかりと受け入れ、その上で、自分独自の生き方・目標を見つけ、その実現に向かって行動してください。それが、これからの時代に合った「主体的に行動する」という生き方だと思うのです。

 私は、みなさんの中に、すでにこの生き方が育っているのを見て来ました。その一つが、運動会の応援合戦です。どの先輩たちより厳しい制限の中で、話し合って決めた自分たちの想いを実現させようと、みんなが同じ方向を向き、一致団結して取り組む姿。当日は、笑顔いっぱいの演技。これこそが、「主体的に行動する姿」そのものだったと思っています。

 四月からはそれぞれの進路で、自分らしさを発揮しながらも、悩みや苦しさに出会うこともあるでしょう。でも、自信を持ってください。在校生は勿論、私たち教職員もみなさんを見守っています。伯方中学校で、ともに学んだ、私たちのことを忘れないでください。時には、伯方中学校に来て、みなさんの成長した姿を見せてください。楽しみに待っています。

 終わりになりましたが、保護者の皆様、お子様のご卒業おめでとうございます。九ヵ年の義務教育を終え、未来に向かっての新しい門出を心からお喜び申し上げます。

 また、PTA活動などを通してお寄せ下さいました本校へのご協力・ご支援に深く感謝いたします。本当にありがとうございました。

 最後に、新たな人生に向かって、旅立つ卒業生のみなさんに、「相田みつお」さんの言葉を送り、式辞とさせていただきます。

  

 「道は自分でつくる

  道は自分で開く

  人のつくったものは

  自分の道にはならない」

 

           令和三年三月十七日

                今治市立伯方中学校

               校長  越智 秀雄