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Part 25 少年式

2022年1月31日 11時16分

※ 少年式でお話しした内容を掲載します。

 

 寒さの中にも梅の木は、赤いつぼみをほころばせ、春の近いことを知らせています。そんな中、本日、少年式を迎えた二年生の皆さん、おめでとうございます。十四歳の晴れの門出を心からお祝いを申し上げます。 

 皆さんは、この「少年式」をどのように受け止めていますか。この式は、自覚を高め、志を立て、健康に心がけながら前進してもらいたいという願いを込めて設けられたものです。少年式に臨んで立てた皆さんの志を見せてもらいました。そこには、未来への可能性が輝いているのを感じました。そこで、今日は、自分の夢に向かって進むことについてのお話しをしたいと思います。

 みなさんは、「中村修二(なかむらしゅうじ)さん」を知っていますか。愛媛県伊方町のご出身で、世界中の科学者が20世紀中には無理だと考えていた「青色LEDの実用化」を、世界で初めて実現し、2014年に「ノーベル物理学賞」を受賞された方です。

 この中村さんが、「夢と壁」という本を書かれておられます。ここには、中村さんの経験をもとに、とても具体的で、夢を実現するための大切な手がかりが、分かり易く書かれてあります。その中で、今日、私が紹介したいのは、「運命力」です。

 みなさんは、自分の夢を実現するためには、運が必要だと考えていますか。「運が良ければ実現するが、運が悪ければ無理だ」と。中村さんも、運は必要だと考えておられます。でも、それよりも、その幸運を引き寄せる力、「運命力」を高めることが一番大切なんだそうです。

 では、この「運命力」は、どうすれば高められるのでしょうか。それは、「待っていてはダメ」「自分の人生を、巡り合えるかどうかわからない偶然に委ねてはいけない」。とにかく「適切な行動を起こせ」と書かれています。行動を起こすことで、運命力が高まり、それに伴って、幸運がやって来るのだそうです。

 中村修二さんは、青色LEDを開発する以前は、当時勤務していた会社での評価は低く、研究費を無駄遣いするだけの人だと思われていたそうです。そんな中村さんが、ある日、一大決心をして、辞表を懐に入れ、社長のところに行って、「青色をやらせてほしい」と言ったそうです。すると社長は、「なんぼかかるんや」「5億です」「わかった。やってみなはれ」と言ってくれたそうです。これがきっかけとなり、社長との信頼関係を強くすることで、青色LEDの開発につながったそうです。

 中村さんの場合、会社での評価から幸運に巡り合えるチャンスはありませんでした。だからこそ、一大決心をして、社長に直談判するという「行動を起こすこと」で、幸運をつかみ、夢を実現できたのです。でも、私たちは、正直、中村さんのような行動をすることは、なかなかできないのではないでしょうか。

 また、こんなことも書いておられます。「幸運は、どういう現象になって、私たちの前に現れるのか」。それは、「出会い」なんだそうです。

 「幸運に出会う人」というのは、「蜘蛛の糸のような、目に見えるか見えないか分からないような細い糸(幸運)、これを敏感にキャッチして、行動を起こすことで、強い絆まで高める人」なんだそうです。せっかく幸運が来ても、めんどくさそうだからと言ってあきらめる人は、決して運が良い人にはなれないということです。あの有名な発明家トーマス・エジソンも同じようなことを言っています。「チャンスがドアをノックしてもほとんどの人が気づかないのは、チャンスがたいてい作業服を着ていて、骨の折れる仕事のように見えるからだ」と。

 そして、中村さんは、「運命力を高めて、運が良い人」になるための2つの方法を教えてくれています。

 1つ目は、「『出会い』を求めてアンテナを高くし、感度を上げる」ということです。幸運とは、人との「良い出会い」です。その出会いを求めて、積極的に人に会いに行って、交友関係を広くすること、関心を広く持つこと。その上で、自分の夢につながる目的やテーマを持って、人の話を聞くことだそうです。そうすることで、幸運との出会いの機会がぐんと高まり、出会いに気付くことができるそうです。

 2つ目は、「出会った絆を強めるために否定語を使わない」ということです。「私は何をやってもダメ」「俺は何もできない人間だ」という言葉を口にすると、この時点で、半分は現実になってしまうそうです。

 その代わり、「私は失敗してもくじけない」「私はこれから伸びる人間だ」という明るく前向きな言葉を使うことで、気分が良くなり、表情が変わる。周りの人が良い印象を持ち、もっとお付き合いしたいと思ってくれ、絆が強くなる。このことこそ、幸運が舞い降りて来たということになるのだそうです

 以上のような方法で「運命力を高め、運の良い人」になることで、自分の夢は「運が良ければ実現する」から、「実現して当然」ということになるそうです。

 私たちは、一人一人、未知の可能性を秘めています。その可能性を信じて生きるためには、先ほどお話ししたことを実践し、「運命力を高める」ために、行動を起こすことが必要ではないでしょうか。         

 今日は、「立志」に関係したことについてお話ししましたが、「自覚」「健康」も夢を実現するためには大切なことです。

 みなさんが、これから、自覚を持ち、健康にも留意して、「志」を実現するために、日々、行動することを願いまして、式辞といたします。

             令和4年2月4日   今治市立伯方中学校長 越智秀雄